狂おしいほどに君を愛している

46.最も効率的なやり方は

「仕事の話に移るか。けど、これは危険な仕事だ。もし、あんたの身に何かあった場合俺たちは責任が取れない」

他国の王族が死ねば国際問題。

こちらに暗殺の疑いがかけられ、戦争に発展することだって有り得る。エドウィンがノエルを関わらせたくないのはそれがあるからだろう。

「この国で死んだ場合、どのような理由であろうと自己責任。よってルシフェルに罪はないと一筆書いている。父にも了承を貰い、サイン済だ」

「‥‥‥準備が良いことで」

「効率よく物事を運ばせるためには当然の処置だ」

エドウィンは呆れながらもそれ以上ノエルに突っかかってくることはなかった。

陛下から聞いていた通り現状は何も分かっていない。手がかりが皆無なのだ。

「召喚に成功したのなら待っていれば何かしらの事件が起こる」

エドウィンがノエルを睨みつける。

「それまで黙って待っていろと?成程。実に効率的だな」

先ほどの言葉を皮肉っているのだろう。それはノエルにも通じた。

彼は怒ることはせず静かにエドウィンを見る。エドウィンはノエルの言葉に怒っているようだ。怒鳴ることはしないけど目に素人の私でも分かるぐらいに強い殺気が宿っている。

「被害者が出るまで待てなんてよく言えたな。同じ王族とは思いたくないね」

「それはどうも。俺も君と同類だと思われたくはない」

ノエルは繰り返し前の人生の記憶がある。そこで私に関わってきた。私の死の原因であるエドウィンたちと同じに思われたくはないのだろう。ただ王族に生まれたというだけで。

「歴史上に名前を遺す偉大な王が善人だったわけじゃない。ただ取捨選択が上手かっただけだ」

「人の命も取捨選択だと?」

エドウィンが唸るように聞き返す。

私はそこに立っているだけで鳥肌が止まらないけどノエルはエドウィンが放つ殺気にまるで無反応だ。

「傲慢に聞こえた?でも王族って傲慢な生き物だよ。それに国を守るうえで命の取捨選択は大事だ。それは常に行われて来た。君のお兄さんだって次期国王として既に陛下からいろいろ引き継いでいるんだろ。だったら彼だって命の取捨選択はしているはずだよ。君はそれでも軽蔑するの?」

エドウィンは怒鳴りたい気持ちを抑え込むために深いため息をつき、頭をガシガシと乱暴にかいて気持ちを落ち着かせていた。

「お前の意見が間違いだとは思わない。全ての人間を救えるなんて思っちゃあいない。それこそ傲慢だ。けどなぁ、最初はなっから何もせずに見捨てることを選択することはできない。どんなに効率が良くてもな。それは人の命なんだ。だから俺は最後まで足掻いて、仕方がないと思えるまでは命を救うつもりだ」

「それこそ傲慢だ」

ノエルの言葉に「そうだな」とエドウィンは笑った。その顔が苦しそうに見えたのは理想と現実の狭間で押しつぶされそうになっているエドウィンの優しさのせいだろうか。
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