【完結】一夜の過ちで身籠ったら、夫婦が始まってしまいました。
しばらくして朱鳥の病室をふと覗くと、朱鳥は出された食事を一口も食べていなかった。
「……朱鳥」
「那智、さん……」
「ご飯、食べないのか?」
俺がそう聞くと、朱鳥は食べたくないと言って目を伏せてしまった。
「……そっか。食べたくないか」
「……すみません、那智さん。赤ちゃんが……」
朱鳥は沈む声でそう言うと、目に涙を浮かべたまま俺を見つめた。
「いいんだ。野山先生にも言われただろ?……お前のせいじゃない」
「でも……。でもやっぱり、悔しいです……。ちゃんと赤ちゃん、生んであげたかった……。この手で、赤ちゃん……抱きたかった……」
朱鳥は涙を流しながらそう言った。俺はそんな朱鳥を見ているのが辛くなって、優しく抱き寄せた。俺の腕の中で子供みたいに泣きじゃくる朱鳥。そんな朱鳥に今、俺は何も出来ない。
どれだけ苦しかっただろう。どれだけ辛いだろう。その悲しみを分け合っていくこと。そんな葛藤を繰り返して、俺たちふたりは乗り越えていかなければならない。