【完結】一夜の過ちで身籠ったら、夫婦が始まってしまいました。



 「……ああ、俺も朱鳥のことが大好きだ。赤ちゃんのことも、大好きだ」

 「はい。これからもよろしくお願いします、那智さん」

 「こちらこそ、よろしく頼むよ。朱鳥」

 朱鳥……。那智さんにそう言われるだけで、心がキュッとなる。そして嬉しくなる。こんなにも、好きな人に名前を呼ばれるって……。すごく自然なことなのに、こんなにも幸せなものだったんなって思った。

 「……那智さん、お願いがあるんですけど」

 「なんだ?」

 「キス、してほしいです」
 
 わたしがそう言うと、那智さんは〈え?〉と不思議そうな顔をした。 

 「……ダメ、ですか?」

 「ダメじゃない。……俺も、キスしたいと思っていた」

 那智さんは、わたしの頰を優しく撫でながら、ゆっくりと顔を近付けてきた。そしてそのまま、お互いの唇がゆっくりと重なった。
 那智さんと結婚してからも何回かキスをしたけど、那智さんとのキスはいつも甘い。練乳や砂糖とかのような甘さではなく、チョコレートみたいなとろけるような甘さがある。


< 76 / 125 >

この作品をシェア

pagetop