その行為は秘匿
「こういうこと。参考になったかしら。」
田部先生は、泣きそうな声でそう言った。
すごく我慢をしている声だった。 
「その生徒の…名前は何ていうんですか。」
「…佐々木朱里。いい名前でしょ。」
囁くような声で言った。
「ありがとうございます。」
どう言えばいいか分からなかった。思っていたより知っていた田部先生。聞いているだけでつらくなる佐々木朱里の過去。
郁弥もずっと下を向いていた。
「…今日は帰ります。ほんと、ありがとうございました。」
「いえ、いいのよ。でもあなたたち以外、この事は秘密にしてほしいの。」
「もちろんです。言いません…いや、言いたくありません。」
「ありがとう。」
先生はまた、いつもの笑顔を向けてくれた。
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