BLADE BEAST
いろんな気持ちが絡み合って、何となく晄とは顔が合わせづらいと思っている自分がいる。

だって今までこんなことなかった。

告られて、付き合って、別れてが何の凹凸も生じずにただ流れていった。

ただただ、それが"幸せ"なのだと思っていたのに、何が違うの?





ふと、指にはめているピンキーリングに目を向けた。

旅行に行って、"私のために買ったんだ"とこれを貰った時には本当に嬉しいと思ったんだ。

晄が好きだと思った。

これがホンモノなんだと思っていたのに、今のこの気持ちと、晄へのそれとは一体何が…何処が違うっていうんだろう。






────そして、また眞紘のことを考えた。


眞紘はあの後、何も答えることができなかった私の頭を二、三度優しく撫でると立ち上がり、乾燥が終わった服に着替えてそそくさと帰っていってしまった。

飄々とした後ろ姿は、妙に甘かった雰囲気を微塵も感じさせない。

眞紘は、ああやって私が困るような台詞を吐いてきたとしても深くは追求してこない。求めてもこない。




一度何かを言って私が困ると、眞紘は決まってそれ以上言うことなく寝るか、話題を変えるか、何処かへ行ったりする。

そしてそんな私も何がしたいんだろう。

あのしれっとした顔がどうも離れない。
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