BLADE BEAST
通り過ぎる車の音も、街のノイズも、人々の笑い声も全て混ざってよく分からないものに聞こえてくる夜。
深い深い、渦が絡み合う海の中に突き落とされた。
今まで見ないようにしていた部分に触れてしまったせいであっけなく崩れ落ちたんだ。
私は、なんなの?
もう……疲れた。
なんて。下を向きながらしばらく歩いても気分が落ち着くことなどなくて、ジワリ、ジワリと涙腺が刺激されたのに耐えきれず、携帯の画面にふと目を向けていた。
スクロールをして、電話帳の中から"彼"を選んでタップする。
────やっぱり、信じたかったのかもしれない。
何かを悟ってくれるって、信じたかったのかも。
スゥ…と息をして携帯を耳に当てれば、三コール目ほどで直ぐに相手とは繋がった。
「もしもーし。どーしたの?莉央」
それはさっきまで聞いてた明るい声。
どうしても、一人じゃいられなくて。