BLADE BEAST
「あーほんとオネーサンいい匂いする……。はぁ……もうとまんないよぉ」
トップスを大きく上に持ち上げ、露わになった胸元に顔を突っ込んでまさぐる一人の男がそう言った。
荒い息遣い。ねっとりと這う舌。完全に出来上がっている自分のそれを私の身体にあてて擦りつけてくる。
ああ…その香水ね、最近変えたの。
晄は、気づいてくれなくてね?
気づいて、くれなくて………、
でも、
「こっちの方が好き」
アイツは──────………。
と、真っ黒な空を見上げたまま一瞬だけあのハチミツ頭を思い浮かべていた。
なんでこんな時にアイツの顔をって、そう考えたらまたさらに苦しさが蘇ってくるようでギュッと目を閉じる。
……眞紘。
心の中で貴方の名前を呼んだら───、
アイツはきっと…"莉央"って、呼んでくれるんだろうな。
なんて、無意識に星のネックレスを握っていたその時、私に寄ってたかって覆いかぶさっていた男三人が────"消えた"んだ。
痛みを堪えるような声が一瞬だけ聞こえたと思いながら、一気に開けたその視界であたりを確認して目を見開いた。
それは────闇に紛れる、寂しい男。
鋭い瞳をちらつかせ、ゾッとするほどに絶対零度の殺気を飛ばしている貴方は、脇腹を抑えて倒れこむ男たちを何度も何度も蹴り飛ばす。
"やめてくれ""許してくれ"
そんな声にも耳を傾けない彼は、まるで冷静に蹴り上げ続け、無言で返り血を浴び続ける。
「……殺す」