BLADE BEAST
眞紘がこんな顔をしているのも、私のせいだ。




「……ごめん」

「…」

「でも、…何とも、ないから」

「…」

「だから──」




「何ともなくねぇだろ………」




それは、切なげに、やるせなげに掠れた低い声。

私の頬を優しく包むと、眞紘は眉を顰めてゆらゆらと瞳を揺らして見つめてきた。キュッと結ばれる唇は、何か言いたげで開いては閉じ、また開いては閉じを繰り返す。




「……何ともなく、ねぇ」

「…まひ、」

「何されたか分かってんの?」

「でも、大したことない──」




それを言い切る前。

また、彼の涼しげな顔には似合わないあの甘いホワイトムスクの香りがした。

聞こえてくる小さな鼓動。

痛いくらいにきつく回される腕。




「大ありなんだよ………」




ヒュウ、と風を切ったような感覚をおぼえながら、私は気がつけば眞紘の胸の中に再び収まっていた。
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