BLADE BEAST
「私は、眞紘を人殺しにしたくないっ…」

「…り、お…」

「大丈夫だから。私、怪我も何もしてないから」

「俺は──」

「…お願いっ……眞紘」




でも胸の内は、嬉しかったり、熱かったり、泣きたかったり、苦しかったりでまるで収集はついていなかった。

一つだけ分かることは──もう、眞紘のことしか考えられなくなってしまったということだけ。




「ありがとっ……」

「…」

「そして、迷惑かけて…ごめん」





悪いのは、私だ。

こんなところをフラフラ歩いて、どうにでもなれば良いだなんて思ってなんの警戒すら持っていなかったから。

もっと冷酷になれたら、何にも動じない鋼の心を持てたのなら、眞紘が不利益を被ることなどなかったのに。




「……なんで、」




そんな時ふと、肩に手が乗せられた。

力を加えられて距離をとられると、僅かに瞳を揺らした眞紘の瞳と私のそれが静かに交差して。




「…なんでこんなとこにいんだよ」

「…まひろ」

「心臓、止まるかと思った」

「…ごめ、」

「もう、ほんとやめて」
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