BLADE BEAST
「……何か、あった?」

「…」

「莉央がこんなとこを無意味に歩きまわるはずない」

「眞紘…」

「言って…?」

「…」

「俺には強がる必要ないから」




抱き締めながら、私の後頭部を優しく撫でてくれる眞紘にキュッと胸が鳴ったことに気づいていた。

耳元で囁かれる言葉に心臓が駆り立てられているそれに驚く半面、不思議な心地よさをも感じて。

────このままずっと離れたくないとすら思った。





「…るの、」

「ん?」

「…親が、今家で喧嘩してるの」

「…喧嘩?」

「可愛いもんじゃない…殺伐とした冷戦」

「…」

「出会わなければよかったんだって」

「…」

「お互い愛人をつくってそっちのが満足なんだって」

「…」

「家族なんて言葉は幻想…。私はなんなの?」

「…」

「いつも家にいない。おかえりもただいまもない。将来の展望も、今日あった出来事だって、話す相手なんていないんだよ。しょうがないって思ってた……。別にかまわないって…思ってたけど……っ、」

「…」

「私、何のために存在してんの……?」

「…」






「私は────いなくてもよかったの……?」
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