仮面夫婦だったはずですが妊娠したら、カタブツ社長は新妻への愛を抑えきれない。
「ただいま……」
敦志に言われるがまま、定時で帰宅した俺はドキドキしながら玄関のドアを開けてリビングのドアを開けた。
「あっ、蓮司さん。お帰りなさい……お風呂沸いてますよ?」
「あ、あぁ」
「……ご飯の準備をしてます」
彼女は背を向け、ハンガーに俺のジャケットをかけながらそう言った。
「ありがとう、入ってくる」
「はい、ごゆっくり」
そう言われ、リビングを出て脱衣所に入る。話し合わなきゃいけないのに……あぁ、もうダメじゃないか。早く帰宅してきた意味がない、そう思い俺はリビングに戻る。
「蓮司さんお風呂に入ったんじゃ……何か足りませんでした?」
「そうじゃない、俺は咲良と一緒に飯が食いたい」
「え? どうしたんですか……? 急に……」
咲良は俺の言葉に驚き、動きを止めた。
「……なぁ、なんで避ける?」
「それは、あの……」
「俺が悪いことしたなら言って欲しい。ちゃんと直すから」
「違うんです、蓮司さんは悪くないです」
だったらなんだ……? なぜ、そんなに避けるんだ。俺はどうしたらいいのか分からない……そう聞こうとしたが「ウッ」と声が聞こえて咲良はリビングから出て行ってしまった。