仮面夫婦だったはずですが妊娠したら、カタブツ社長は新妻への愛を抑えきれない。


「ど、どうしたんだ……気持ち悪いのか?」

「……ごめんなさいっ迷惑かけてしまって。大丈夫です。私、もう休みます」


 咲良は気まづそうにして、逃げるように出ていってしまった。
 やっぱり俺は何かをやってしまったんだろうか。







「─︎─︎咲良? 大丈夫か……?」

「れ、蓮司さん……っ」


シャワーだけを浴びて寝室へ向かう。寝室ではすでに横になっている咲良がいて、呼びかければ俺の顔を見て名前を呼んだ。


「ん?」


優しく咲良に問いかける。


「あのっ……、蓮司さん」


咲良は身体を起こし涙目で俺をもう一度見る。何かを言いたげにしているが、言いにくそうに俯く。


「……私、─︎─︎しました」


肝心な部分が聞き取れなくて「もう一度」と咲良に聞く。


「私、に、妊娠しましたっ」


 “妊娠”の言葉を聞いて俺はとても驚いてしまい、言葉にできない。だけど、心の中はポカポカと温かくなっていくのがわかった。

 こんな気持ちは初めてで……衝動的に彼女を抱きしめていた。





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