仮面夫婦だったはずですが妊娠したら、カタブツ社長は新妻への愛を抑えきれない。
「美味しいよ、咲良」
「良かったです!」
私もナイフとフォークを持ち、一口サイズに切ると生クリームをつけて口に入れた。
自分が作ったけどめちゃくちゃ美味しい……!
「生クリームついてる」
「えっ! ど、どこですか!?」
蓮司さんは「ここ」と右側を指差してその手を私の頬に近づけ、それを指で掬いパクっと舐めた。
「……食べたら話があるんだ」
「は、はい」
もしかして好きな人と一緒になるから離婚されるのかも。後継者を産めば用無し……か。やはり引くしかないだろうか。
「咲良、好きだ」
……え? す、き?
「咲良、俺はお見合いの日からずっと好きだった。好きだったのに、歳の差がどうとかそういうのを気にしたんだ」
「え……」
「俺は咲良が好きだから抱いたんだ。咲良が可愛くて理性が抑えられなかった……だからあの日『愛さなくてもいい』という言葉は撤回させてくれ」
「……蓮司さんは、私のことが好きで結婚してくださったんですか?」
私は、両親に言われたんだよ……?
『大事な跡取りを産みなさい。それが稲葉に嫁ぐ意味なんだからね』
「それは両親が言っていただけだ、俺は会社の為とはいえこの結婚にまだ若い咲良を縛りつけることはしたくなかった。」