幼馴染からの抜け出し方
 
 声を掛けるべきか掛けないでおくべきか考えているうちに、気が付くと由貴ちゃんはだいぶ先を歩いていた。私のいる場所と由貴ちゃんのいる場所の距離がぐんぐんと離れていく。

 由貴ちゃんが、交差点を曲がろうとしたときだった。それまで長身の由貴ちゃんにすっぽりと隠れて見えなかったけれど、隣に女性がいることに気がついた。

 ふたりはどうやら由貴ちゃんが持っている傘に一緒に入っているらしく、いわゆる相合傘というものをしているらしい。

 身長が、由貴ちゃんの胸のあたりぐらいまでしかない小柄な彼女は、由貴ちゃんの腕にぴったりと体を寄せて歩いている。


 その人は、誰……?


 由貴ちゃんが女の人と一緒にいるのを見るのは初めてじゃない。イケメンな由貴ちゃんはよく女の子のたちから告白をされていたし、付き合うことだってあったから。


『さすが由貴ちゃん! モテるね~』

『やっぱり由貴ちゃんの彼女は由貴ちゃんにお似合いで美人だね~』


 そんなことを言ってよくからかっていたほど、今まではなんとも思わなかったはずのに。

 どうして、今はこんなに胸がざわざわとして落ち着かないんだろう。


 この前は、私を好きだと言ってくれたのに……。


 同じ傘をさしながら女性と密着して歩いている由貴ちゃんを見た途端に、胸がきゅっと締め付けられたように苦しくなった。


 誰かに由貴ちゃんを取られてしまう危機感を初めて感じた。

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