幼馴染からの抜け出し方
「どうして断ったの?」
「それ聞く?」
由貴ちゃんが静かに笑う。
「俺が好きなのはめぐだからに決まってるだろ」
由貴ちゃんはそう言うと、ベッドに仰向けに寝ている私の頭のすぐ橫に片手をついた。そのまま私に覆い被さるようにして、少しずつ顔を近づけてくる。
「ゆ、由貴ちゃん」
お互いの鼻と鼻が触れそうな距離まで顔を寄せられて、私は思わず由貴ちゃんの胸に手をつくと体をそっと押し返した。
私の風邪が由貴ちゃんに移ったら大変だ。でも、由貴ちゃんはそんなことお構いなしに、もう片方の手で私の手首をつかむとさらにぐっと顔を寄せてきた。
お互いのおでこが合わさると、由貴ちゃんの穏やかな目が私を優しく見つめる。
「キスしてもいい?」
「風邪移るかもよ」
「いいよ。それでもしたい」
なんだか今の由貴ちゃんは、いつもの彼らしくなくちょっと強引だ。ぼんやりとそんなことを思いながら目を閉じると、由貴ちゃんの唇がそっと優しく私の唇に触れて、すぐに離れた。
「好きだよ、めぐ」
囁くような声のあと、もう一度口づけられた。それに私も応えるように、由貴ちゃんの首に両手をそっと回して抱き着けば、キスがもっと深くなる。
――好きだよ、由貴ちゃん。
このキスのあとで、ちゃんと伝えるね。
そして、一緒に幼馴染から抜け出そう。
end.


