弔いの鐘をきけ
だというのに息子夫婦はニコール以上にその事実に打ちのめされ、怒りと嘆きを露わにしてくれた。テッドと仕事に明け暮れてばかりの母親だったのに、息子は自分と夫を心の底から慕ってくれていた。両親の活字好きの遺伝子までは受け継がれなかったが、息子は好きなことを仕事にいまを一生懸命生きている。
その息子が愛する女性との間に作ったのが目の前にいるジェシカだ。ニコールが「おばあちゃまなんて呼ばせない」と公言していたこともあり、彼女は物心ついた頃からニコールのことを「ニコ」と姉のように、友人のように呼んでくれる。生まれて十八年、本が大好きな愛らしい黄金色の髪の少女は、当り前のようにタチアナ書房に居座り、編集者たちと談義できるまでに成長した。自分がいなくても彼女は読みたい本を探しにあちこち冒険できるし、知らない語彙を調べて学ぶこともできる。大学で海外文学を専攻している彼女は、いつかこの国を飛び出して行くに違いない。
「……とはいえ、ジェシカがお嫁にいくときまで頑張ってほしかったな」