弔いの鐘をきけ
Jessica
「ひとは死んだら、どこへ向かうんだろう」
リーン、ゴーン、と響く教会の鐘の音。
黒服の集団がぞろぞろ、軍隊アリのように列を作って歩いていく。
その先頭には、白木でできた四角い棺。
棺のなかに眠らされた彼女の姿を、きっと忘れることはないだろう。
ニコールが好きだった、真っ白な薔薇の花をたくさん詰め込んだ棺。
赤い色が嫌いだった彼女は、白い色を好んでいた。
ジェシカにとって白は、祖母の象徴で、憧れで……
「天国、かな」
自信なさそうに応える男を前に、女は苦笑する。
遺骸は土の下へ、魂は天国の階へ。
「……天国は、遠いよね」
「そうでもない」
え、と泣き腫らした顔をあげるジェシカの顎に手を差し伸ばし、己の顔を近づけながら男は囁く。
「君がお望みなら。俺が天国に一番近い場所まで連れて行ってやる」
「ミト……?」
近すぎる距離に戸惑うジェシカに、ミトは悪魔のような微笑みを見せた。
そして意地悪な選択を迫る。
祖母を亡くしたばかりで消沈している彼女が、拒めないのを確信して――
「さあ、どうする?」