弔いの鐘をきけ

 ジェシカはそう言って、再び万年筆を手に取り、嘯く。
 身体は繋げたけれど、心まではあなたにあげないと、嘲りながら。
 けれども彼は心の底から満ち足りた表情でジェシカの唇を奪い、「素直じゃないね」とあたまを撫でる。
 綺麗事だけでは儘ならないこの世界で戦いつづける彼女は牙を剥くようにミトを睨みつけ、ふいと顔を背ける。
 文字という武器を、原稿用紙という戦地で駆使しながら。
 すべては愛する祖母に捧げるため。けして目の前の男のために書いているわけじゃない。


 だってこれは、鎮魂歌という名の物語だから――……
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