またいつか君と、笑顔で会える日まで。
「了解~!あたし、萌奈と行くから先行ってて~!!」

リリカちゃんはグループの子にブンブンと手を振る。

リリカちゃんと仲良しの嶋田さんと浅川さんが驚いた様子でこちらを見ている。

それに気付いていないのか、リリカちゃんは再び私の方に向き直った。

女の勘が働く。多分、これはマズい状況だ。

「リリカちゃん、大丈夫なの?」

「えー、何がぁ?」

「友達、先に行っちゃうよ?」

「なんで。ダメ?」

「ダメってことはないけど、友達と一緒に行った方がいいんじゃないかな?私は一人で行けるし」

むしろ、高校に入学してから誰かと一緒に移動教室に向かったことは一度もない。

「今から追いかければ、まだ間に合うかもしれないよ?」

彼女の背中を押す。

女の友情はあっけなく壊れるということを私は身をもって体験してきた。

リリカちゃんはこういう性格だし、スクールカーストの頂点に立っている。

そんな彼女ならハブられたりイジメられたりすることもないかもしれない。

だけど、やっぱり気になる。

リリカちゃんが私のようになったら、嫌だ。

彼女にはいつも笑顔でいて欲しい。

だって、彼女は私のような人間にも分け隔てなく声をかけてくれる優しい人だから。

「あたしは萌奈と一緒に行くよ」

「でも……」

「言ったじゃん。萌奈だってあたしの友達だもん。その理由だけじゃ、ダメ?」

私の顔を覗き込んで大きな目をぱちくりさせながら尋ねるリリカちゃんに私は首を横に振った。

「ダメじゃないよ」

ダメなんかじゃなくて、むしろ逆。私は嬉しかったのだ。

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