またいつか君と、笑顔で会える日まで。
彼女のその言葉が。

『友達』と言ってもらって泣きそうなほど嬉しかった。

「ま、ダメって言われてもあたしはきかないけどね?」

そう言ってリリカちゃんは口の端をクイっと上に持ち上げて得意げに笑った。


「萌奈さー、なんでいつも一人でいるの?」

次の授業は生物だ。

生物室へ向かう道中、リリカちゃんはさらりとそう尋ねた。

「それは……」

「一人でいたいタイプには思えないんだけど」

「一人でいたいっていうか……どうしても一人になっちゃうっていうか……」

「本当は一人になりたくないんでしょ?って、聞かなくても分かる。誰だって一人ぼっちは嫌だもん。そんなの淋しいよ」

リリカちゃんはそう言って肩をすくめた。

「もしかして昔、色々あった系?」

「うーん、そんな感じ……かな?」

困ったように笑うと、リリカちゃんは「そっか」と言ったっきりそれ以上追及してこなかった。

見境なく他人の領域に踏み込んでくるかと思っていたから少しだけ意外だった。

「まあ、人間だし色々悩みとか人に言えないこととかあるよね」

「……リリカちゃんにもあるの?」

ないだろうな、と思いながらも聞いてみた。

順風満帆を絵にかいたような生活をしているであろう彼女にそんな悩みがあるとは思えない。

ルックスはパーフェクトだし、学力は申し分ないし、運動だってできる。

社交的でコミュ力が高くて友達も多い。

彼女の周りはいつも人が絶えず、輪の真ん中でいつだって楽しそうに笑顔を浮かべている。

リリカちゃんはそういう人だ。例えるならば、周りを明るく照らす太陽みたいな人。

「あるよ、あたしにもそういうこと。毎日悩んでばっかりだもん」

「え」

意外な返答に面食らっている私に気付いて、リリカちゃんが唇を尖らせる。

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