またいつか君と、笑顔で会える日まで。
一橋リリカside

どうして萌奈はあたしの傘を使わなかったんだろう。

「なんで?」

昇降口から傘を差さずに駆けていく萌奈の姿が瞼に焼き付いて離れない。

教室にも戻り杏奈とすずに「萌奈と何かあった?」と尋ねても二人は「何もない」の一点張りだった。

でも、萌奈の様子が妙に気にかかった。

ラインを送っても既読にならず、電話も繋がらない。

あんな土砂降りの中傘も差さずに学校を飛び出すなんて信じられない。

何かがあったとしか思えない。

バイト中も萌奈のことが気になって仕方がなかった。

仕事中、何度か店長に隠れてこっそりラインを確認したもののいまだに既読がつかない。

ちゃんと家に帰れているのかも分からず、不安が募っていく。

萌奈と直接会って話がしたいと思い担任に住所を聞いたけど個人情報だと言われ教えてもらえなかった。

しつこく粘ると町内までは教えてくれた。

そこからどうにかして彼女の家を探し出そうと思っていたけど、家に行く理由を探さなくてはならない。

どうしよう。なにがある。そんなことを考えていると、品出し中に萌奈が送ってきたスタンプの猫とコラボしたスイーツが発売されていたことに気が付いた。

そのとき、ある考えが頭を過った。

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