こんなにも愛しているのに〜すれ違う夫婦〜

茉里の思い

平井 理恵は
ましろが理恵おばさんとよぶ私の親友。
大学時代からの友人で
私と樹が知り合うきっかけとなった
樹の友人の彼女でもあった。
その彼とは
早々に別れていたが。
現在は独身で
弁護士事務所を開くやり手弁護士となっている。

樹との今回の件は昨夜電話でざっと
話しておいた。
「立ち直れないくらい、叩いてやろうか。」
と言われた。
自分の子供のように、ましろを可愛がってくれている理恵なら
ましろに寄り添ってくれるはずだ。

「ましろ、起きてる?」

部屋の外から声をかけた。

「あの人は。。。。」

「会社。」

『ガチャ、』

よれよれになった制服のまま
目は泣き腫らしたまま
部屋から出てきた。

「とりあえずシャワーを浴びてらっしゃい。
学校には今日お休みしますって、連絡をしておくから。」

「シャワーを浴びて、学校に行く。」

「行けるの?無理をしなくていいから。」

「きつくなったら帰って来る。でも帰りたくないかもしれない。」

「。。。。。」

「お母さん。。」

ましろは私に抱きついて
また
泣き始めた。

父親を好きで信頼して尊敬していたから、余計に
どうしようもなく狂おしいのだろう。

「今日は理恵おばさんのところでお世話してもらって。
おばさんには言っているから。お母さんはお父さんときちんと話し合いたいの。
もしかしたら、お母さん、取り乱して喚き散らすかもしれないし、、、ちょっと
自分を抑えられるかどうか、不安なのよね。」

少し冗談めかして言ってみる。

「私、あの人がいるところで息ができない。
お父さんがあんなにあんなに汚い人だなんて。。。」

「ましろ、わかったから。しっかりと話をしてましろを守るにはどうしたらいいかを、
1番に考えるからね。
学校まで送って行こうか?」

「私もお母さんを守るから、あの人のせいで自分を駄目にしたくないから、
学校も行くし、あの人と別々に暮らせるまで、理恵おばさんのところにいさせてもらう。」

「ましろ。。。。」

ましろは身支度を整えるとかばんを持ち、身の回りのものをキャリーにつめ、
これを理恵おばさんのところへ届けてと言って、家をでて行った。
心配で学校まで送って行きたかったが、学校まで自分で気持ちを切り替えながら行きたいから、
1人で行くと我が子ながら、気丈に出て行った。

信じていた夫に浮気された私が、真っ先に泣きたいのに、
愛する父親の不様な姿を見せつけられて、
一生トラウマになるやもしれない大きな傷を背負った娘を、
なんとかケアしたくって、幸か不幸か、私はいち早く冷静になれそうだ。
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