ちょっと大人だからって、ずるい。


「俺の名前、矢野茅っていうんだ……昨日の男に、聞かれただろ」


「あ、」


そういえば、そうだった。


―――矢野茅を探している。


確か、男はそう言っていた。


「ちょっとしくじっちまって…悪かったな。……怪我は痛むか?」


ちらりと私の右腕に目をやる茅。


本当に申し訳ないと思っているようで、心配げに眉が下がっていた。


「うん、いまは全然痛くない」


「そうか…」


少しほっとしたような表情を見せる茅。


かと思えば、ギリっとこちらを睨みつけ


「けど俺は女が嫌いだ!…悪かったとは思うが、俺に近づくなよ!!」


と、吠えた。


なんだか犬みたいだ。

大型犬。

ゴールデンレトリバーみたいな。


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