心理作戦といこうか。
隣でぶつぶつ言う千草を無視し、素早くpcの電源を落としアルバムを段ボールへ仕舞い引っ越し作業へと切り替える。

「まっ別に良いけど。
 つーか、真琴の学校行事に兄貴が参加してたなんて知らなかったよ。
 教えてくれれば俺も行ったのに。」

「千草は部活だったり受験だったりで忙しかったろ?」

「あーそっだったっけ。まっちびっこ真琴にはこれっぽっちも興味なかったし誘われても行かなかったかもな。」

「ちびっこ真琴って。
 大人の真琴に興味を持たれても困る。」

呆れたような顔で「兄貴って嫉妬深いのな。」とため息混じりに言われ、「真琴限定だけど」と返した。
こんなやり取りが出来るのも彼のお陰でもある。
何故か相談事があると俺より千草にしていたらしい、真琴を未だに許せてない小さいな自分が情けなくなる。
アルバムがバレないように本と本の間に仕舞いガムテープでもう誰にも見られないようにがっちりと閉める。

トントンと聞こえたドアのノック音に目を向けると真琴が申し訳なさそうな顔で覗く。

「玲君ちかちゃん、お茶にしよ~ってママ達が言ってるんだけど切りが良いところで来れるかな?」

「えっ?もう?兄貴の部屋全然進んでないけど大丈夫?
 真琴に怒られんなよっ」

「心配するなら一人で作業させてくれよ。
 余計な仕事を増やしているのは千草だろ?


「ふふふ。言い合いなんて珍しいね、じゃれあってるみたいで可愛いけど。
 進み具合はどうかなあ?
 玲君のお母さんがケーキ持ってきてくれたの。
 切りが良いところでみんなでお茶にしよっ
 人手は沢山あるから人数増やしたらどうかな?」

引っ越し業者に梱包やら何やら頼む予定が想定外の両家族総出の片付けとなったわけだが。
母親たちはお喋りが大好きだからこうなることは想定内ではある。
一口飲んでケーキはラップに包んで夕食の後に回すか。
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