ステレオタイプの恋じゃないけれど
悠真とナギサちゃんとの間に起こったことを詳しく聞いたわけではないけれど、悠真が言うにはこのややこしい現状は自業自得なのだそうだ。「唯一じゃないなら要らない」とフラれたらしい。自業自得ということと「唯一じゃないなら」というセリフから、悠真が浮気をした、または、二股をかけていた、という予想が立てられる。
が、しかし。どこからどう見ても想い合ってるふたりの間に割って入るほど、己は、無粋な人間ではないと思っている。
「……何でユウにぃ?」
「え、いや、」
しかし、そう。
おそらく、悠真のことを口にしたのが唐突過ぎたのだろう。初日に向けられた、あの抉るような視線をここでもまた向けられた。
まぁ、そりゃあ、そうだよな。
俺は悠真の気持ちもナギサちゃんの気持ちも知っているが、彼女はそれを知らない。一度も断ったことのない俺が、俺より悠真を、なんて言った日にゃ、怪しまれるのは当然の帰結だ。
「……あのさ、ゲンくん」
「っは、はい」
「私、ユウにぃとどうこうなりたいなんて思ってないからね。まぁ、確かにさ、ユウにぃのことは好きだったけど」
「……えっ、や、」
「ユウにぃが彼女と別れたから、って思って気を使ってくれたのかもしれないけどさ、ごめんね。余計なお世話だよ、それ」
「……っ、」
何とか、自然に。
なんて、軌道修正をはかろうとする前に、迎撃されてあえなく撃沈。
いや俺だってそんなのしたくねぇよ。
でも、悠真はたったひとりの友人で、ナギサちゃんのこと好きだからこそ幸せになって欲しくて、何より両想いなの知ってて「俺を見て欲しい」なんて言う勇気を、生憎俺は持ち合わせていない。