婚約破棄されたので、森の奥で占いお宿をはじめます。
「セシリア……」

彼がずいぶん疲れた顔をしているのは、気のせいじゃないと思う。


「……どちら様でしょうか?ここに、セシリアという名の者はおりません。御用がないのでしたら、お帰りください」

感情を込めず、淡々と述べて出入り口を示した。


彼に対する未練が少しもないことは、こうして彼を目の前にして再確認できた。
とはいえ、信じてもらえなかった悔しさや、そのせいで肩身の狭い思いをしている父への申し訳なさは、心の内に居座り続けている。


私の物言いに、すかさず護衛が前に出て咎めようとした。しかし、アルフレッド自身がそれを制し、一旦席に着いた。


「チェリー、お願いしていい?」

「う、うん」


今さら彼に関わりたくなくて、接客をチェリーに任せようとすると、すかさずアルフレッドが遮った。


「いや、けっこう。店主はいるか?」


一体、なにをしに来たのか……
彼の声に、カウンターからドリーが姿を見せた。





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