婚約破棄されたので、森の奥で占いお宿をはじめます。
それから3日後のこと。
それは、なんの前触れもなくやってきた。


「いらっしゃいませー」

チェリーの声に反応して顔を上げると、久しぶりに見る人物が入り口に立っていた。その後ろには、護衛の騎士が1人だけ控えている。
一国の王太子にしては、ずいぶんと身軽な様子だ。


「こちらにどうぞ」


元気いっぱいに接客するチェリーを見向きもしない。まるで魔法で固められてしまったかのように、微動だにせず。ただひたすら、私を見つめていた。


「いらっしゃいませ。そこは他のお客様のじゃまになります。こちらにお触りください」


こっそり小さく息を吐いて、仕方なく声をかけた。ハッとした彼は、弾かれたように足早に、私の元へ近付いてきた。




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