婚約破棄されたので、森の奥で占いお宿をはじめます。
「それで、なにを占えと?」

不躾に放った私に、アルフレッドが顔をしかめた。
背後に控える騎士も、険しい顔になる。


でも、仕方がないでしょ?ライラである私は、目の前の彼がどこの誰なのか、全く知らないのだから。


「セシリア……」

「私は、セシリアではありません」


言葉を詰まらす彼に、さらに追い討ちをかける。


「どこのどなたか存じませんが、他人の空似ではありませんか?」


切なげに瞳を揺らした彼は、それでもなんとか気を取り直したのか、背筋を伸ばして瞳に力を込めた。


「失礼。我が名はアルフレッド・グリージア。ここに私の知り合いに似た女性がいると耳にして、確かめたくてやってきた。
あなたは、その女性にとてもよく似ている。
名前を教えてもらえないだろうか?」


こちらが失礼な態度をとっているにも関わらず、アルフレッドは真摯な姿勢を崩さない。

仕方がない。彼はこの時間を買ったのだ。店主である、ドリーの許可のもとに。





< 133 / 260 >

この作品をシェア

pagetop