婚約破棄されたので、森の奥で占いお宿をはじめます。
「ライラ、こっちに来て」


朝から元気なチェリーに、引きずられるようにして外に出れば、コンパクトなのにやたら豪華な馬車が止まっていた。

この獣道のような森を、よく入ってこれたものだと、思わず感心しているうちに、抵抗もできないまま乗せられてしまう。
そこには、なぜか王子様然りといった格好のルーカスが待っていた。


「ライラ!!」


不意打ちでガバリと抱きつかれ、もがく私。「ジャレット。ジャレットはいないの?」と助けを求めるも、彼は先にトールキャッスルにいるという。


「なんて美しいんだ!!」


私の首筋に顔を埋め、鼻を擦り付けるルーカスを、なんとか落ち着かせると、それを見届けたかのような、絶妙なタイミングで馬車が動き出した。

この馬も獣人なのかと聞けば、これは正真正銘、本物の馬らしい。




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