婚約破棄されたので、森の奥で占いお宿をはじめます。
「向かい合わせで座りましょうよ」


なぜか隣り合って座っている私達。ルーカスによって、ギュッと手を握られているのも意味がわからない。


やっと正常に動き出した私の思考は、ひたすらこの状況はなんだと、疑問しか浮かんでこず。寝ぼけていた時と、たいして変わらなかったようだ。


「今日はライラにも同行してもらう」

「は?」

なにゆえに?

「私、お店があるんだけど……」

「心配するな。ドリーの許可は取ってある。それに、今日は前にチェリーが森で助けてやったアンが手伝いで入っているから問題ない」

アンといえば、先日森に迷い込んでしまったリスの獣人だ。チェリーと同年代ぐらいの女の子だったはず。

雨で足を滑らせて怪我を負い、気を失っていたところを、出勤してきたチェリーが保護してきたのだ。


森の宿は、そうやって働き手が増えたり入れ替わったりしていく。アンのような子は、感謝を伝えるために手伝ってくれる。気が済んで去っていくこともあれば、長く勤める子もいるらしい。



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