婚約破棄されたので、森の奥で占いお宿をはじめます。
「確か……緩衝地帯は、トールキャッスル付近にほんの少し店があるぐらいで、あとはほとんどが森林だって言ってたわ」


水晶がこの場所を見せたということは、私の未来は緩衝地帯にあるというのだろうか?この場所へ行けと……


正直、会ったことのない獣人に対して、不安がないわけじゃない。
けれど、水晶の中のこの様子を見ると、人間と獣人の仲は、決して悪いものではなさそうだ。


この屋敷に留まっていても、待ち受けるのは真っ暗な未来。


私を信じてくれなかったアルフレッドに対する未練はもうない。全て吹っ切れている。

まして、私を陥れた人達に仕返しを……なんて気持ちもない。



過去に縛られるのも、恨みに囚われるのも、私らしくない。



本来の私は、みんなが言うような優しいだけの人間じゃなかったはず。

なんでも挑戦することが好きな、明るく活発だった幼少時代。

それが、〝貴族令嬢とは〟なんて教育がはじまって、〝王太子殿下の婚約者〟なんて肩書きが加わっていくにつれ、自由は奪われ、常に〝模範〟でいなければならなかった。






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