婚約破棄されたので、森の奥で占いお宿をはじめます。
「本当に、合ってるのかしら……」


歩きはじめて、もうどれぐらいの時間が経っただろうか?
後ろを振り返っても、森の入り口はもう見えない。後ろも前も、人の存在を感じさせるものは、何一つ見当たらない。さすがに不安になってくる。


「奥って、どれぐらい奥なのよ……もっと詳しく聞いておくべきだったわ」


思わず不満をもらすも、今さら悔いてももう遅い。

けもの道を辿ってるって言っても、ここまで何回か「こっちでいいのよね?」って、迷う地点を通過してるから、もはや正しい道に進んでいるのか、自信なんて少しもない。

お転婆って言われた私も、さすがに大人しくなってしまう。


陽の光はますます届かず、薄暗さが増している。


「サバイバルグッズが欲しい……」

セシリアとしてアウトドアの経験なんて全くないけれど、前世のさくらとしては、キャンプへ行くことも数回あった。あの便利な道具達があったら……だめだ。無い物ねだりなんてしても、なんの解決にもならないわ。





「はあ……」


何度目かのため息をついた時、ふと、様子が変わったことに気が付いた。
足下ばかりに目を向けていたけれど、不意に明るさが増した気がして、視線を上げた。





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