綺麗になんてなれない

「こっちは……五年も、あんたの感傷に付き合ってんの。今さら、泣いたくらいなんでもないの。もう最後まで付き合う覚悟できてるから。むしろ――泣いてわめいて、いいかげん、スッキリしろよ!」

 叩きつけるように叱責した私を、義之は激情を押し固めたような苦しげな瞳で睨み返してきた。喉を締められているのかと思うほど、彼の絞り出す声は苦悶に満ちていた。

「……できねぇよ」
「え?」
「泣きわめく、なんて、なんで今さらできるんだよ……」
「よしゆき」
「あの二人は……最初から両想いだったんだ。それを、俺が無理やり間に入ったんだ……。だから、なんの憂いもなく幸せになっていいんだ。――俺の気持ちなんか、誰も知らなくて、いいんだよ……っ!」
「…………」
「そう思ってるのに……まだ、引きずってる。若葉をめいっぱい利用して傷つけて、自分のことしか見えてなくて……クズなんだよ、俺は」

 打ちひしがれたように、義之の身体からは力が抜けて、苦痛を自分だけで背負いこもうとする唇が引き結ばれる。そんな姿をこれ以上見ていられなくて、

「いいよ!」

 私は義之を力いっぱい抱きしめた。

「そんだけ我慢してたら充分でしょ! どうせ私のこと利用するなら、なにもかもぶちまけたらいい! 私は義之が心配なの! 辛いのを一人で我慢させたくないの! もっと利用してよ! 義之と同じくらい傷つけてよ! そのために、私はそばにいるんだよ……」

 なんで分からないの……?
< 22 / 24 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop