伯爵令嬢のつもりが悪役令嬢ザマァ婚約破棄&追放コンボで冥界の聖母になりました
 二人の様子を見ていたウェイン王子が立ち上がった。

「クラクスもエレナ殿を気に入っているようだ。慣れない宮殿で行き違いがあったのだろう」

 ヒューム大臣は厳格に首を振る。

「しかし、ウェイン殿下、国王陛下に御報告いたしませんと。クラクス殿下への不敬罪は見過ごすわけには参りません」

「いいから、お前達、手を離しなさい」と王子が衛兵達に命じた。

 衛兵達は老大臣に視線をやりつつも、王子の命令に逆らうわけにもいかず、エレナを解放した。

 立ち上がったエレナはウェインの正面に立って一歩前に踏み込んだ。

「ありがとうございます。このような場に慣れぬ者でございますゆえ、不手際をおわび申しわげます」

「なに、かまわんさ。さあ、皆の者、せっかくのめでたいパーティーだ。楽しもうではないか」

 王子が手を挙げて楽団に合図すると華麗なワルツが大ホールに響き始め、取り巻いていた人々はまた舞踏や談笑へと戻っていった。

 足下にいたクラクス王子はまたカミラの方へ歩み寄っていく。

「ダッコダッコ」

 よほど彼女の胸がお気に召したらしい。

 ま、わたくしのホッペと柔らかさは似てるんでしょうけど。

 それより、ミリアはいったいどういうつもりなのかしら。

 王宮に到着してから侍女としての役割をまったく果たしていない。

 何をたくらんでいるというの?

 探して問いただそうとしたとき、ウェイン王子がエレナの手を引き寄せて耳元にささやきかけてきた。

「一曲お相手をお願いできるかな」

「え、ええ、もちろんですわ。喜んで」

 第一王子の誘いを断る理由などない。

 こっちに乗り換えるチャンスだ。

 二人は手を取り合って舞踏の輪に加わった。

 エレナは舞踏は得意ではないが、貴族の子女のたしなみ程度にはこなせる。

 ウェイン王子はエレナがステップをミスするたびに腰に回した手でしっかりとフォローしてくれる。

 彼女に向けられる余裕に満ちた微笑みは貴公子にふさわしいものだった。

 国の将来を担う第一王子の華麗なリードで優雅に舞う二人に人々の視線が集まり、惜しみない拍手が送られる。

 さきほどエレナを嘲笑していたご婦人方も扇で口元を隠しながら嫉妬の視線を送るのが精一杯のようだった。

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