伯爵令嬢のつもりが悪役令嬢ザマァ婚約破棄&追放コンボで冥界の聖母になりました
 エレナは王子に名乗った。

「シュクルテル伯爵家のエレナと申します。本日初めて参内いたしました。以後、お見知り置きを」

 若者も彼女を見つめ返す。

「このような美しい姫が悪者とは思えないが……」

 まあ、王子様。

 美しく可憐な聖女だなんて。

 言い過ぎですわ。

 エレナは頬を赤らめた。

「……衣装は古くさいようだが」

 王子の言葉に失笑が花咲く。

 ああ、もう!

 それは言わなくてもいいでしょうに。

 人々の脚の間をひょこひょことすり抜けながら幼いクラクス王子が歩み寄ってきた。

 いつの間にかカミラの胸からおりてきたらしい。

「オネオネ」

 エレナの頭をポンポンとたたいて喜んでいる。

 何よ、さっきから、この子。

 いくら王子だからって、よだれまみれの手で触らないでよ。

 エレナが顔を背けようとすると、よけいに手を出してくる。

「オネオネ」

 オネオネって何よ?

 ……『おねえちゃん』ってこと?

 まあ、そりゃあ、この子からしたらお姉さんですけど。

 婚約者を『おねえちゃん』と呼ぶような子供と結婚なんてごめんだわ。

 といっても、ここでまた不機嫌な表情を見せたら面倒なことになる。

 クラクス王子のよだれまみれの指で頬をつつかれながら、エレナは笑顔を崩さないように努めていた。

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