伯爵令嬢のつもりが悪役令嬢ザマァ婚約破棄&追放コンボで冥界の聖母になりました
「おっと」

 王子の足を踏んでつまずきそうになってしまった。

「す、すみません」

 考え事をしていて、完全に舞踏を忘れていた。

 そんなエレナの腕を引き寄せて王子がささやく。

「君たちの婚姻はクラクスが生まれる前から結ばれていたものだよ」

 エレナが生まれたときからの契約だと聞かされていたから、歳の差を考えればそうなることは理解できる。

「もし、クラクスが生まれなかったら、契約は不成立で、君も今日ここにはいなかったというわけさ」

「そうだったのですか」

「世継ぎの王子は僕一人でいいからね。他の弟たちはみな家臣に婿入りさせて世継ぎの兄を支えるってわけさ。それが貴族社会の仕組みっていうものだよ」

 得意げに語る王子の説明がエレナに重くのしかかる。

 クラクス王子と結婚しても、王家の一員になれるわけではなく、これまでの田舎暮らしは変わらないのだ。

 しかも、あんな歳の離れた子供とでは、まともな恋愛を経験することもなく、自分だけが先に年老いていくことになるだろう。

 急に体が震え出す。

 そんなのは嫌だ。

 相手がカエルじゃなければいいなんて甘く考えていたけど、これじゃあ、カエル以下かもしれない。

 いくら貴族社会のしきたりだからって、こんなのはあんまりだ。

 お父様も、どうしてちゃんと話してくださらなかったのだろうか。

 それはもちろん、もう何年も前から病の床にあって話す機会がなかったのだろうし、聞かされていたところで、断れる立場でもない。

 父を責めてはいけないことは分かっていた。

 でも、だからといって、納得できるわけではない。

 嫌よ、こんなの嫌よ。

 逃げ出してしまいたい。

 無理だということも分かっている。

 分かっていることばかりなのに、どれ一つとして、受け入れることなんてできない。

 エレナは叫び出しそうになる衝動を必死にこらえた。

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