伯爵令嬢のつもりが悪役令嬢ザマァ婚約破棄&追放コンボで冥界の聖母になりました
再び静かになった牢屋の中で、エレナは食事に手を伸ばした。
パンの陰から黒い虫がひょっこり顔を出す。
「おまえはゴキブリというのですか」
話しかけると、返事するかのようにゆらりと触角を揺らす。
名前が分かると急に親近感がわく。
「おまえも食べますか」
パンを小さくちぎって床においてやろうとすると、エレナの動きを見て警戒したのか、ゴキブリはまた壁際へ逃げてしまった。
「大丈夫。わたくしはおまえをつぶしたりはしませんから」
エレナは虫をあまり見たことがない。
母が大切にしていたバラの庭園で見た蝶やバッタくらいしか知らない。
ハエや蚊といった害虫も知ってはいたが、召使いたちが駆除していたから目にする機会はほとんどなかった。
ゴキブリを見たことはなかったし、それに対する恐怖や偏見もなかった。
エレナはパンをスープに浸して口に入れた。
ほとんど味のないスープだったが、お腹が空いていたせいか、体にしみいるような気がした。
だが、あまりにも少なすぎてあっという間に食べ終わってしまった。
いつもならチーズやフルーツも好きなだけ選べるというのに、全然物足りない。
斜陽貴族といえども恵まれた生活だったことをエレナは初めて思い知ったのだった。
いったいいつまでここに閉じこめておくつもりなのだろうか。
さっきの男達に聞いたところで何も知らないだろう。
お父様はどうしているだろうか。
パンの陰から黒い虫がひょっこり顔を出す。
「おまえはゴキブリというのですか」
話しかけると、返事するかのようにゆらりと触角を揺らす。
名前が分かると急に親近感がわく。
「おまえも食べますか」
パンを小さくちぎって床においてやろうとすると、エレナの動きを見て警戒したのか、ゴキブリはまた壁際へ逃げてしまった。
「大丈夫。わたくしはおまえをつぶしたりはしませんから」
エレナは虫をあまり見たことがない。
母が大切にしていたバラの庭園で見た蝶やバッタくらいしか知らない。
ハエや蚊といった害虫も知ってはいたが、召使いたちが駆除していたから目にする機会はほとんどなかった。
ゴキブリを見たことはなかったし、それに対する恐怖や偏見もなかった。
エレナはパンをスープに浸して口に入れた。
ほとんど味のないスープだったが、お腹が空いていたせいか、体にしみいるような気がした。
だが、あまりにも少なすぎてあっという間に食べ終わってしまった。
いつもならチーズやフルーツも好きなだけ選べるというのに、全然物足りない。
斜陽貴族といえども恵まれた生活だったことをエレナは初めて思い知ったのだった。
いったいいつまでここに閉じこめておくつもりなのだろうか。
さっきの男達に聞いたところで何も知らないだろう。
お父様はどうしているだろうか。