伯爵令嬢のつもりが悪役令嬢ザマァ婚約破棄&追放コンボで冥界の聖母になりました
ふと気がつくと、壁際でゴキブリがパンのかけらに覆い被さっていた。
小さなかけらとはいえ、ゴキブリの体と比べたら巨大な岩くらいの比率になる。
「わたくしには足りなくても、おまえにはごちそうですね」
話しかけるとまるで返事をするかのように触覚を揺らす。
エレナは独り言をつぶやいた。
「カエルと結婚するのは嫌でしたが、今となっては、カエルの方がましでしたね」
つい、笑ってしまう。
ゴキブリの他に誰もいない牢獄で一人、エレナは背中を丸めながら膝にあごをのせてつぶやき続けた。
「おまえと結婚したら、わたくしをここから連れだしてくれるかしら?」
ゴキブリが足をぴくりとのばして体をこちらへ向けたような気がした。
「無理よね。あ、でも、わたくしがゴキブリになればいいのかしらね。そうすればあの高い窓から一緒に外へ飛んでいけるかもしれませんね」
他にすることもないと、つまらない空想が楽しくなる。
でも、次の瞬間、急に虚しさに襲われてエレナの目から涙があふれ出した。
誰か。
誰でもいいからわたくしをここから連れだして。
お城へ帰りたい。
誰かわたくしをお城へ連れてかえって。
……カサカサ。
目を上げると、お盆の上の器にゴキブリが入っていた。
泣いている間にいつのまにか近寄ってきていたらしい。
スープの入っていた器のふちに足をかけてこちらを見ている。
ゆらゆらと揺れる触覚が手招きしているように見える。
エレナは涙をぬぐった。
「わたくしを連れ出してくれるのですか?」
ゴキブリは逃げずに触覚を揺らしている。
小さなかけらとはいえ、ゴキブリの体と比べたら巨大な岩くらいの比率になる。
「わたくしには足りなくても、おまえにはごちそうですね」
話しかけるとまるで返事をするかのように触覚を揺らす。
エレナは独り言をつぶやいた。
「カエルと結婚するのは嫌でしたが、今となっては、カエルの方がましでしたね」
つい、笑ってしまう。
ゴキブリの他に誰もいない牢獄で一人、エレナは背中を丸めながら膝にあごをのせてつぶやき続けた。
「おまえと結婚したら、わたくしをここから連れだしてくれるかしら?」
ゴキブリが足をぴくりとのばして体をこちらへ向けたような気がした。
「無理よね。あ、でも、わたくしがゴキブリになればいいのかしらね。そうすればあの高い窓から一緒に外へ飛んでいけるかもしれませんね」
他にすることもないと、つまらない空想が楽しくなる。
でも、次の瞬間、急に虚しさに襲われてエレナの目から涙があふれ出した。
誰か。
誰でもいいからわたくしをここから連れだして。
お城へ帰りたい。
誰かわたくしをお城へ連れてかえって。
……カサカサ。
目を上げると、お盆の上の器にゴキブリが入っていた。
泣いている間にいつのまにか近寄ってきていたらしい。
スープの入っていた器のふちに足をかけてこちらを見ている。
ゆらゆらと揺れる触覚が手招きしているように見える。
エレナは涙をぬぐった。
「わたくしを連れ出してくれるのですか?」
ゴキブリは逃げずに触覚を揺らしている。