伯爵令嬢のつもりが悪役令嬢ザマァ婚約破棄&追放コンボで冥界の聖母になりました
 お城に到着したのは暗くなってからだった。

 荷車から降ろされたエレナは衛兵に引きずられながら城館へ入った。

 ミリアが命じて縄が解かれる。

 棺におさめられた父と対面したときには、もう涙はすっかり涸れてしまっていた。

 お父様。

 もうしわけありません。

 婚約どころか罪人として戻って参りました。

 それに、わたくしがこの手でお父様に毒を飲ませていたなんて。

 わたくしもすぐに後を追いますから、先に天国でお母様と一緒になっていてください。

 ああ、でも、わたくしはご一緒できませんね。

 わたくしの行き先は地獄ですものね。

 エレナにとって、棺の中の父が静かな笑みを浮かべていたのだけは幸いであった。

 伯爵家代々の墓地はお城の地下にある。

 暗い階段に松明がたかれ、使用人の男たちが棺を運びおろした。

 城付の司祭によって簡単な儀式が行われ、埋葬が終わる。

 司祭たちが階段を上がっていく。

 ミリアは衛兵にエレナをまた縛るように命じた。

「この女を地下牢へ閉じこめておきなさい」

 地下墓所の奥には遠い昔に使われていた地下牢がある。

 もちろん、エレナはそんなところへ行ったことはなかったし、どんなところか想像もつかなかった。

 松明を掲げた衛兵に先導されながらミリアも一緒に地下牢へ向かう。

 カビと腐臭の混じったような空気が固まったように動かない。

「ここでわたくしを殺すのですか」

 地下洞窟に虚しく響くエレナの言葉にミリアは静かに答えた。

「殺しはしません。ただ閉じ込めておくだけです。それからあなたがどうなるのかは私には関係のないことです」

 そして鼻で笑いながら肩をすくめた。

「私の手はいつでも綺麗ですから」

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