伯爵令嬢のつもりが悪役令嬢ザマァ婚約破棄&追放コンボで冥界の聖母になりました
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おかしな騒動があってからしばらくは平穏な時間が過ぎていた。
時間とは言っても、冥界には昼夜の区別や日時といったものはなかった。
いつも暗かったし、一日の区切りというものもない。
ものすごく時間が過ぎたような気もするし、ほんの一瞬しかたっていないような気もする。
一、二、三と数を数えて時を意識してみようとしても、途中で数えていること自体忘れてしまう。
冥界では眠くなることも、疲れることもない。
眠ろうと思えば眠れるし、眠らなくても体調に変化はない。
そのときそのときで気まぐれにうれしくなったり、気分が落ち込んだりすることはある。
ただ、それも記憶に残らないうちに消えてしまうのだった。
初めのうちはどれくらいの時が流れたのか気になっていたエレナも、いつしか気にするのをやめていた。
ルクスは地上へ行っていることが多く、その間、エレナはメイド服を着て一人で屋敷の掃除をしていた。
やっても無駄だと言われていたとおり、少しはきれいになったかと思っても、別の部屋を掃除して戻ってくると、もうそこは降り積もる罪の埃に覆われているのだった。
人の罪というのは、尽きぬものなのですね。
ついため息をついてしまう。
でも、そのおかげでエレナは退屈しなくてすんでいたのも事実だった。
単調で報われない作業だったが、掃除をしていると不思議と心が安らぐのだった。
もしかしたら、わたくし、このようなことに向いているのではないかしら。
城にいた頃は退屈を持て余してミリアにあきれられていたけれど、まわりの者が何でもやってくれる生活は楽であっても、そこに喜びなどなかったのではないかと思えてくる。
それにくらべたら、ここでの生活はましなのではないか。
そういった思いがわきおこるたびに、彼女は指に輝くサファイアを眺め、父と母のために祈りを捧げるのだった。
わたくしはここで元気にやっております。
お父様もお母様も天国で安らかにお過ごしください。
エレナは冥界での生活に少しずつなじんでいくのだった。