伯爵令嬢のつもりが悪役令嬢ザマァ婚約破棄&追放コンボで冥界の聖母になりました
「この真っ赤な木の実の効果ってすごいんだよ。あたしずっと食べまくってるから、バインバインにはじけちゃって、服とか胸とお尻がきつくて困っちゃうのよね」

 自分には関係のない悩みだ。

「あんたはいいわよねぇー」

「なんでですか?」

「ポロリするほど胸ないじゃん。アハハハハ」

 さすがにカチンときて、エレナは奥歯をギリギリとかみしめた。

 出て行きなさいと言いたいところだけれど、そもそもここは自分の城ではないのだ。

 行き場のない怒りの気持ちが体のうずきをますます増幅させていく。

 胸ははじけなくても、顔が熱くてはじけてしまいそうだ。

 少し横になって休んだ方がいいかもしれない。

「お、おいしいお料理をごちそうさまでした」

 席を立って、自分の寝室に戻ろうとしたときだった。

 キッチンの出口にはルクスが立っていた。

「あ、おかえ……」

 エレナを横から突き飛ばしてサキュバスが駆け寄る。

「やだあ、帝王様ぁ。お帰りだったんですかぁ」

「ああ、今戻った」

 サキュバスがルクスに抱きついて黒光りするマントに潜り込む。

「帝王様わぁ、熟したのと青いのどっちがお好み? ていうか、あたし? やだぁ、もう」

 ルクスがサキュバスの手を取って、口づける。

「指輪が似合うではないか」

「でしょぉ。こんな素敵なもんプレゼントしてくれるなんて、やっぱり帝王様ってチョーイケメン、あたしマジ感謝」

 ちょっと、それはわたくしのですよ。

「ふさわしき者にこそ、ふさわしき物を。おまえの指にあってこその宝石だ」

「ですよねぇ」

 なにが『ですよね』ですか。

 人の物をだまし取っておいて。

 二人のやりとりを見ているとイライラしてきてしまう。

 エレナは二人のわきを通って自室へ行こうとした。

「体調がすぐれませんので、失礼します」

 だが、ルクスはエレナの方を見もせず、サキュバスと話している。

「やっと俺の女になる気になったか」

 は?

 どういうことですの?

「あったりまえじゃーん。ていうか、あたし、帝王様に最初っからメロメロなの知ってるでしょぉ」

「あれほど嫌がっていたではないか」

「えー、誰それ? そんなことないしぃ。帝王様のことが嫌いな奴なんているんですかぁ? そいつ馬鹿なんじゃないの」

 チラリとエレナの方に視線を向けながらサキュバスがルクスの体を撫で回している。

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