伯爵令嬢のつもりが悪役令嬢ザマァ婚約破棄&追放コンボで冥界の聖母になりました
 街道を駆け抜けていく他の馬車が砂ぼこりを残して去っていく。

 どこの貴族なのか、扉には紋章が描かれていた。

 あの馬車も王宮へ行くのだろう。

 みっともない姿を見られてしまった。

 伯爵家の令嬢ともあろう自分がこんなことではいけない。

 エレナはまっすぐに立ち上がって並木道の先を見つめた。

 まだくらくらしていて視線が定まらない。

 だが、こんなところにとどまっている場合ではなかった。

「お嬢様、時間がありません」

「ええ、もう大丈夫です。急ぎましょう」

 ミリアに背中を支えられながら乗り込むとすぐに馬車が走り出す。

 速度を上げたせいで、揺れがいっそう激しくなり、壁に頭をぶつけてしまった。

 痛っったい!

 気持ち悪いし、痛いし。

 これなら、いっそのこと気絶する方がましだわ。

 エレナはクッションに顔を押しつけながら、こみ上げてくる吐き気に耐えていた。

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