伯爵令嬢のつもりが悪役令嬢ザマァ婚約破棄&追放コンボで冥界の聖母になりました
 そして、エレナはもう一つ大切なことに気がついていた。

 城のベッドに敷かれていた布団はいつも暖かかった。

 どんなに寒い冬でも、寝床に入るとほかほかとしてエレナはすぐに眠れるのだった。

 あれはミリアが毎晩こうして暖めておいてくれたからなのだろう。

 おねしょばかりしているわたくしのために、そんなことまで気をつかっていてくれたなんて……。

 そんなにもわたくしのために仕えてくれたミリアが、どうして……。

「どうしたの、ママ?」

 え?

 振り向くとそこには男の子が立っていた。

 寝ぼけた目を手の甲でこすりながら首をかしげている。

「泣いてるの?」

 気がつくと、エレナの頬には一筋の涙が流れていた。

 彼女は指先で涙をぬぐって男の子を抱き寄せた。

「いいえ、大丈夫ですよ。いらっしゃいな」

「うん」

「僕ね、一人でおトイレに行ってきたよ」

「あら、暗くありませんでしたか?」

「怖かったけど、行けたよ」

 エレナは男の子の背中をさすってやった。

「今度からいつでもママがトイレに連れて行ってあげますからね」

 男の子はにこりと微笑むと、彼女の腕の中で安らかな寝息を立て始めた。

 エレナは暖炉の前に座り込んで、しばらく男の子の頭をそっとなでてやっていた。

 暖炉の炎が揺れる。

 寝室の暗い壁に映る彼女の影も次第に揺れ始めた。

 暖炉の炎に照らされて涙の乾いたエレナの寝顔には微笑みが浮かんでいた。

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