イミテーション・ハネムーン




「紗季、オレンジジュースはどう?」

「ええ、いただくわ。」

次の日の朝、朝食のバイキングで私は圭吾さんと再会した。
ずっと一緒にいたかのような自然さで、私達は、一緒に朝食をとった。



「今夜の温泉、楽しみだね。」

「そうね…」

今日は十時過ぎの列車に乗って、温泉に向かう。
私の人生もあと三日…
そう思ったら、なんともいえない気持ちになった。







「あ、海だよ。綺麗だなぁ…」

圭吾さんは、窓の外の景色に目を細めた。



「本当ね…」

青い海が陽の光を浴びて、きらきらと輝いていた。
その景色を見ていたら、なぜだか私は昨日の女性のことを思い出していた。
やはり、あの人のことは昨日からずっと私の心にひっかかっていたようだ。



「あの人…大丈夫だったかな?」

「……昨日のあの女の人?」

「え…あ…うん。」

圭吾さんは、私がついぽろりと言ってしまった『あの人』が誰なのかをすぐに当てたから、少しびっくりした。



< 13 / 21 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop