イミテーション・ハネムーン




「……大丈夫?」

「ええ…泣いたりしてごめんなさい…」

「そんなこと、気にしなくて良いよ。」

そう言って、圭吾さんはハンカチを差し出してくれた。
圭吾さんは本当に優しいし、気配りの出来る良い人だ。
最後にこんな人と一緒に旅行が出来たのは、やっぱり幸せなことだと思えた。



そのことをきっかけに、私は圭吾さんのことをとても信頼するようになっていた。
出会うのがもっと早ければ…こういう人を好きになってたら…
ふと、頭に浮かんだ考えを私は慌てて打ち消した。



(もう決めたんだから…)



その日の観光は昨日よりもさらに楽しいものとなった。
心の底からリラックスして、私は観光を楽しんだ。



夜は、温泉に浸かり、新鮮な海の幸を堪能した。
身も心も癒された気がした。



「それでね…」

食後、二人で飲みながら他愛ない話をした。
昨日よりもずっと打ち解けて話すことが出来て、圭吾さんも楽しそうに見えた。
話に夢中になっていると、不意に圭吾さんのスマホのアラームが鳴った。



(あ……)


柱の時計は十時を指していた。
そう…魔法の解ける時間だ。



「あの……」

圭吾さんが困ったような顔をした。
私は、大きく頷いた。



圭吾さんはその意味を察したのか、立ち上がって部屋を後にした。
それと入れ違いに、昨夜の山本さんが入って来た。



そう、これはあくまでも仮想のハネムーン…
嘘でもなんでも、最後に良い思い出を作れればそれで良い。



私の人生もあと二日…



(思いっきり楽しまなくちゃ…!)






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