恐怖ダウンロード
故障
あたしと夢の2人はいつものファミレスに来ていた。


あたしはグラスに入った氷をぼんやりと見つめている。


夢はいつものようにパンケーキをほおばっていた。


「……よく食べられるよね」


何気なく聞いたつもりだったけれど、つい声色がきつくなってしまった。


夢は食べる手を止めてあたしを見た。


「今日で復讐は全部終わったんだよ? あたしたちは自由になれた」


あたしは返事をしなかった。


そうかもしれない。


靖も陸も美紀も、そして愛子も死んだ。


もうあたしたちを苦しめる人間は1人も残っていない。


でも、本当にこれがあたしたちが望んだ結末だった?


4人と一緒に、普通の学校生活を送ることはできなかったんだろうか?


「ねぇ、そんなに深刻な顔するのやめてよ。せっかくのパンケーキがまずくなる」


夢がしかめっ面をして言った。


「だって……」


後味の悪さを感じているのはあたしだけなんだろうか?


「あたしだって、最初はとまどったよ」


「え?」


夢の言葉にあたしは首をかしげる。


「アプリで復讐すること、本当にいいのかなって思った。だけどアプリは消せないってわかったとき、割り切るしかないんじゃないかって思ったんだよ」
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