セフレのテラダ
私の声も白い息に乗る。
誰もいない空間。
時が止まっているかのような街並み。

夜から朝に変わる空。

「セフレになってくれませんか。」

・・・

あまりの突拍子もない発言。
拍子抜けする私に、ニカッと笑顔を投げかけてくる。

「え?」

反射的に出る声。

「セフレ!セックスフレンド!」

恥ずかしげもなく笑顔で答えるテラダ。

「ちょっと!分かってる!分かってるけど、は?なに言ってんの!?は!?」

私は急いでテラダの言葉を掻き消すように駆け足で近づく。

「なってください。」

言葉に似つかわしくない爽やかな笑顔。

「ば、バッカじゃないの。なかったことにしてってさっき言ったよね!?」
「いや、むり。」

まっすぐに私を見る目。

「は?」

二人の白い息が間で交わる。

「俺、めっっちゃ気持ちよかったんだよね。」

テラダが爽やかな笑顔で言う。

「間違いなく人生で初めて。」
「何言ってんの。」

私がそう言うと、少し驚いた顔をした。

「え、俺だけ?サーヤ、あんなに喘いでたじゃん。」
「は?演技に決まってんじゃん。」

テラダは私から少し目を逸らして独り言のように「いや、あれは演技じゃないね。」と呟く。

なんなの、この男。

「セフレとか、絶対に嫌だ。」

私がしっかりと答えると、テラダはまた私の方に姿勢を向けて、突然頭を下げた。

「セックスだけでいいです!それ以上何も求めません!」

バカみたいなセリフがその場に響き渡る。

< 8 / 61 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop