白豚王子育成計画〜もしかして私、チョロインですか?〜
――もうやめた。
リイナ=キャンベルでない『私』から逃げることをやめて、もう腹をくくったのならば。
死んだ後の世界で泥沼のような恋に落ちた今、あとはとことん溺れるだけだ。
「だから、あなたの理想の『リイナ』をもっと私に教えてください!」
「それって……僕がリイナを育てていいってこと?」
エドから突如感じた不穏な雰囲気にたじろぐものの、女は度胸。私は頷く。
すると、その白豚は「グフフフフフ」と笑い出した。
「そうか……僕がリイナを調教していいんだ……」
「いやあの……その言い方はなんか違うような……」
「でも、そういうことだよね? リイナが僕を調教するから、僕もリイナを調教していいってことだよね?」
「だから調教はなんか……」
「うーん。やっぱり霊人とは言葉の齟齬があるのかな? 育成なら伝わる?」
なんですか、そのゲーム感覚の言葉のチョイスは。てか、多分調教って言葉に世界観の齟齬はないよ? 単純にあなたと私の間に感覚の違いがあるだけだよ?
それでも、エドがあまりに嬉しそうに笑うものだから。
病人にあまり強く言うわけにもいかないしと、私はなんとか嘆息するだけに収める。
だけど、言うべきことは言うのだ。
私は無理やりエドを布団をかける。
「はい、それじゃあ早く寝て下さい! さっさと風邪なんか治して、また減量してもらいますからね!」
「やっぱり、太っている僕は嫌?」
端から目だけを覗かして上目遣い。くそぉ、太っていようが可愛く見えるのは、私も疲れが回っているからだろうか。それとも恋という病が移ってしまったのだろうか。
「違います! 健康のためです! また寝ている途中で息が止まるとか勘弁して下さい。五体満足毎日に美味しいご飯が食べられるってすごく幸せなことなんですからね!」
「僕が死んだら、リイナ泣いてくれるの?」
「こっちはすでに一度死んでいる身ですから。こうなれば泣く暇も惜しいんで、天国でも地獄でも付いていきますよ」
「グフフ。僕いっそ死んでみるのもいいかも」
「冗談はこのくらいにしてさっさと――――」
私は再び布団を整えようとすると、エドの熱い手が伸びてきて。
ちょっとこの白豚王子調子に乗って! 手を引っ張るな! なんか上手いよう関節決めて無理やりベッドに乗せようとするな!
「じゃあ、今日はリイナと一緒に寝ようかなぁ」
「だめ! 寝ません! 病人は大人しくしてないと! 手なら繋いでてあげますから!」
「ありがとう、リイナ。僕個人を愛してくれて……」
「いや、そんなことより……ちょっとどこ触っているんですか?」
「はは、そんなことって……もう逃さないから覚悟してね。この歪んだ愛情を受け止めると決めたのは君なんだから」
それは、布団の下。完全にエドに覆いかぶされた状態で、耳元に囁かれる。
彼の顔を見たら、金の瞳だけが獲物を捉えた獣のように光って見えた。
私がその妖しさにハクハクしていると、エドがニッコリと微笑む。
「あぁ、このリイナは本当に可愛いなぁ」
そしてそのまま一夜がすぎ。
朝日が差し込む窓辺に、いつもキャンベル家にいた小鳥を見かけた時、私は思った。
もしかして、やっぱり私はチョロインなのかもしれない。
リイナ=キャンベルでない『私』から逃げることをやめて、もう腹をくくったのならば。
死んだ後の世界で泥沼のような恋に落ちた今、あとはとことん溺れるだけだ。
「だから、あなたの理想の『リイナ』をもっと私に教えてください!」
「それって……僕がリイナを育てていいってこと?」
エドから突如感じた不穏な雰囲気にたじろぐものの、女は度胸。私は頷く。
すると、その白豚は「グフフフフフ」と笑い出した。
「そうか……僕がリイナを調教していいんだ……」
「いやあの……その言い方はなんか違うような……」
「でも、そういうことだよね? リイナが僕を調教するから、僕もリイナを調教していいってことだよね?」
「だから調教はなんか……」
「うーん。やっぱり霊人とは言葉の齟齬があるのかな? 育成なら伝わる?」
なんですか、そのゲーム感覚の言葉のチョイスは。てか、多分調教って言葉に世界観の齟齬はないよ? 単純にあなたと私の間に感覚の違いがあるだけだよ?
それでも、エドがあまりに嬉しそうに笑うものだから。
病人にあまり強く言うわけにもいかないしと、私はなんとか嘆息するだけに収める。
だけど、言うべきことは言うのだ。
私は無理やりエドを布団をかける。
「はい、それじゃあ早く寝て下さい! さっさと風邪なんか治して、また減量してもらいますからね!」
「やっぱり、太っている僕は嫌?」
端から目だけを覗かして上目遣い。くそぉ、太っていようが可愛く見えるのは、私も疲れが回っているからだろうか。それとも恋という病が移ってしまったのだろうか。
「違います! 健康のためです! また寝ている途中で息が止まるとか勘弁して下さい。五体満足毎日に美味しいご飯が食べられるってすごく幸せなことなんですからね!」
「僕が死んだら、リイナ泣いてくれるの?」
「こっちはすでに一度死んでいる身ですから。こうなれば泣く暇も惜しいんで、天国でも地獄でも付いていきますよ」
「グフフ。僕いっそ死んでみるのもいいかも」
「冗談はこのくらいにしてさっさと――――」
私は再び布団を整えようとすると、エドの熱い手が伸びてきて。
ちょっとこの白豚王子調子に乗って! 手を引っ張るな! なんか上手いよう関節決めて無理やりベッドに乗せようとするな!
「じゃあ、今日はリイナと一緒に寝ようかなぁ」
「だめ! 寝ません! 病人は大人しくしてないと! 手なら繋いでてあげますから!」
「ありがとう、リイナ。僕個人を愛してくれて……」
「いや、そんなことより……ちょっとどこ触っているんですか?」
「はは、そんなことって……もう逃さないから覚悟してね。この歪んだ愛情を受け止めると決めたのは君なんだから」
それは、布団の下。完全にエドに覆いかぶされた状態で、耳元に囁かれる。
彼の顔を見たら、金の瞳だけが獲物を捉えた獣のように光って見えた。
私がその妖しさにハクハクしていると、エドがニッコリと微笑む。
「あぁ、このリイナは本当に可愛いなぁ」
そしてそのまま一夜がすぎ。
朝日が差し込む窓辺に、いつもキャンベル家にいた小鳥を見かけた時、私は思った。
もしかして、やっぱり私はチョロインなのかもしれない。