スイレン ~水恋~
宴もたけなわでお開きになり、上機嫌な酔っ払い達はひとまとめにマイクロバスで強制送還されてった。主役の家族として駐車場でそれを見送り、あたしも志田にマンションまで送ってもらうつもりでいた。

子供じみてる自覚だらけだけど、お兄も杏花さんを憎からず思っていそうなのが見るに堪えなくて。聞き分けのいい妹の化けの皮がいつ剥がれるか、そろそろ自信もなくなってた。

「梓は明日も休みだろう。実家(うち)に泊まっていけ」

酔ってはないけど珍しく(あか)い顔のお兄。凛々しい紋付き袴姿の隣りには、微笑まし気に寄りそう淑やかなお嫁さん。

「ここのところお前の顔をろくに見てないんだぞ?杏花にも、俺の大事な梓のことはよく知ってもらわんとな。三人でゆっくり飲み直しだ」

甘い笑み。俺の大事な・・・って。ずるいお兄、杏花さんの前で言われちゃったら意地でも断れないじゃない・・・っ。

きゅっと掌を握りしめ。剥がれかかった化けの皮の上から笑顔の仮面を、根性でもう一枚!

「お兄が言うならそうするね」

こうなったらベッタベタにお兄にひっついて、不滅の兄妹愛を見せつけてやるんだからぁ~~っ。

吠えた。脳内で。半べそをかきながら破れかぶれに。
< 8 / 293 >

この作品をシェア

pagetop