エセ・ストラテジストは、奔走する




「…今日は、触れても良い?」


見下ろされている彼の顔立ちはいつも通り整っていて、どちらかというと冷たく映るくらいのポーカーフェイスなのに。

ちょっと子供みたいな伺う声色と、不安定に揺れた瞳に、さっきから忙しない心が、もうこれ以上無いくらい拍動を続けている。



優しく涙を拭ってくれる彼にまた頷こうとして、
はた、と体が止まった。


作戦は、失敗ばかりだった。

自分から種明かしするのも、もういつものことで、
私はやっぱり、全然、作戦設計者《ストラテジスト》じゃ無い。


でも、茅人1人に全部、

言わせてばっかりじゃダメだ。



「……茅人。」

「ん?」

「あの時、ごめんね。」 

「……」

「茅人が今まで沢山頑張ってくれてたこと、何も気づいてなくて、確かめようともしなくて、勝手に不安になって、」


“飽きられたのかと、思った、“


言葉は思った以上に、相手の心に入り込んで深く深く痕を残す。

嬉しくて幸せな言葉ばかりを紡げる人間なら良かったけど、私はきっとそうじゃない。



だからこそ、間違った時は、ちゃんともっと勇気を出して、この人を包める言葉を送りたい。


手を握ってくれているのとは違う方の手が、
いつもみたいに優しく頬に触れる。


「そんなの良いよ」って許されてる気になる、
そんな温かい熱にどうしても甘えたくなるけど。


_____私だって、言わないと。

< 105 / 119 >

この作品をシェア

pagetop